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内科32.脳卒中
 脳卒中(脳血管疾患)は、がん、心臓病とならび3大疾病の一つといわれ、 日本人の死因の上位にランクされています。特に日本は欧米と異なり、虚血 性心疾患(冠動脈疾患)よりも脳卒中が多いことが特徴です。
 脳の血管がつまったり、破れたりして、その先の細胞に栄養が届かなくなって、細胞が死んでしまう病気です。急に倒れて意識がなくなったり、半身のマヒが起きたり、ろれつが回らなくなったりする発作が起ます。一時的な半身のマヒや手足のしびれ、ものが二重に見える、ちょっとの間、言葉が出てこなくなったりといった前触れ(前兆)が先に起きていることもある。これは脳の血管が一時的に詰まるために起こるもので、これに気づくと大きな発作の前に治療をすることもできます。でも気づかないことも少なくありません。

主な前触れ(前兆)
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1.からだの片側がしびれたり、手足に力が入らない
2.足がもつれて歩けない
3.話したいのに、急に言葉が出なくなる
4.ろれつがまわらない
5.人のいうことが一時的に理解できない
6.ものが二重に見える
7.片眼が見えなくなったり、視界の半分が見えない
8.食べ物が一時的に飲み込めない
9.突然、激しい頭痛が起こる
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 発作が起きるとからだの片側がマヒしたり、言葉が出なくなったり、ものが飲み込めなくなったりします。それから発作の後、寝たきりになると、使わない筋肉がこわばって動かなくなるという合併症も出ます。
 治療やリハビリでかなり回復しますが、治療やリハビリが遅れると、その分、回復が難しくなります。すぐ治療をしないと病気が進行して症状がひどくなるし、再発作が起きて命を失うこともあります。

 日本において脳卒中の死亡率は1970年ぐらいを境に年々減少しています が、これは主に脳内出血の減少が、脳卒中全体の死亡率を下げてきたから といえそうです。ところが、脳血管が詰まる方の脳梗塞は、むしろ少しずつ増加ないし頭打ちの状況です。 特に、この脳梗塞の中でも、太い血管の梗塞であるアテローム血栓性脳梗塞や、心原性脳塞栓症が増えてきています。これは、わが国 の生活習慣の変化によって、糖尿病、あるいは脂質異常症というものが増 えてきたことを反映しているのだろうと推定されます。今後、わが国が高齢化 社会に向かって行くということを考えると、恐らくこの傾向は、まだま だ続くのではないかと、考えられます。
 海外からの報告を中心に脳卒中のリスクファクターとして『脂質異常症』 が注目されてきています。血清コレステロール値と脳卒中死亡率との関係をみたMRFIT では、血清コレステロール値が高いほど脳梗塞の死亡率が高まることが示されています。 また、脳卒中発症率とスタチン投与におけるLDL−C低下率との関係か ら、LDL−Cの重要性が示唆されています。
 1960年代までは脳卒中は『わからない、治せない』という時代でしたが、 CT、MRI という技術の発展と普及によって脳卒中診断は画期的な進歩を 遂げました。CT が最初に出た頃は、脳出血と脳梗塞、この2つの疾患を明確に分ける ことができるということで、大変な進歩でした。その後、MRI が出てきま して、非常に早期から早いケースでは1時間以内に、病変の大きさや部位 を明確に出すことができるようになりました。これによって、脳卒中の治療が大きく変わってきました。

 脳卒中は、脳出血・クモ膜下出血・脳梗塞にわけられます。さらに脳梗塞は、 心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞の3つの病型に分 けることができます。脳梗塞のうち、24時間以内に回復するものを一過性脳虚血発作と呼びます。大きな脳梗塞発作の前触れ発作ともいわれる。一時的に片方の目が見えなくなったり、ろれつがまわらない、半身がいうことをきかなくなるなどの症状が起こる。再び血液が流れると症状もなくなります。また、症状が出ていない脳梗塞でMRIなどで偶然発見されるものを無症候性脳梗塞といいます。
 心原性脳塞栓症は心臓からの血栓が血流により移行し塞栓になって脳動脈 を閉塞するものです。アテローム血栓性脳梗塞は脳の太めの血管内腔が狭くなったり、詰まったりする病気です。ラクナ梗塞は脳の細い動脈(直径200〜500ミクロンほどの細い血管)が詰まってできる小さな梗塞をいいます。
 脳梗塞はかつて脳血栓症、脳塞栓症という分類をしていましたが、現在はどの ようにして血管が詰まったか、どの場所が詰まったかという成因別に分類 されています。これはCTやMRIなどの画像診断により病態が明確に把握でき、病態に応じて急性期の治療も慢性期の再発予防も異なった方法がとられるために、病型をこのように分類することが必要になってきたのです。

危険因子
□ お酒をたくさん飲む
□ たばこを吸う
□ 運動不足である
□ 太っている
□ 高血圧である
□ 高脂血症である
□ 糖尿病である
□ 脈が乱れることがよくある
□ 60歳以上である
□ ストレスがたまっている
□ ゆっくり休めない
□ 完璧主義である
□ 家族や親戚に、脳卒中にかかった人がいる
□ 味付けの濃いものが好き
□ 脂っこいものが好き
□ 味見をせずに調味料をかけることが多い
□ 果物を食べることが少ない
□ 野菜をあまり食べない

注意すべき生活習慣
1.大量飲酒・・・1日に1合を越えてお酒を飲む人には、脳卒中で死亡する人が多くなる。
2.たばこ・・・1日平均40本のたばこを吸う人は、吸わない人に比べて4倍も脳卒中で死亡しやすい。
3.運動不足・・・運動が不足すると、食事でとったエネルギーを消費しきれず、肥満につながるばかりか、糖尿病や高脂血症、高血圧も引き起こす。
4.肥満・・・脳卒中の危険因子である高血圧や糖尿病の原因になるため、間接的に脳卒中の危険因子となる。

治療すべき病気
1.高血圧・・・血圧が上昇すると脳卒中にかかりやすくなったり、死亡する人が多くなったりする。
2.高脂血症・・・脳卒中のうち、脳梗塞になりやすい。
3.糖尿病・・・糖尿病の人では、脳卒中で死亡する率が、正常な人の2〜3倍になる。
4.心臓病・・・ 心房細動(脈の乱れ)は、心臓の中にできた血のかたまりが血液の流れに乗っていき脳の血管で詰まって脳梗塞の原因となる。

減塩の具体的なやり方
1.減塩しょう油を使う
2.天然のだしをいかす
3.ハーブや香辛料で味付けする
4.酢や柑橘類など、酸味を利用する
5.味見をせずにいきなり調味料を使わない
6.甘味が濃いと塩分も濃くなりがちなので、砂糖やみりんの量を控える

コレステロールを取りすぎないために
1.乳脂肪をとりすぎない
2.卵黄は1日1個程度に
3.即席麺やスナック類などを控える
4.チョコレートなど、甘いものは控えめに
5.肉(とくに脂身)を控える
6.揚げ物や炒め物は、植物性の油で
7.青背の魚を積極的にとる
8.食物繊維を含む食品をとる

お酒の適量
(以下のうちいずれか)
日本酒一合(180mL)
ウイスキー・ブランデー・ダブル一杯(60mL)
焼酎ぐいお湯割り一杯(80mL)
ビール中瓶一本(500mL)

CT・・脳にX線をあてて、コンピュータで断面画像にする。脳のどこに出血や梗塞があるかがわかる。
MRI・・磁気共鳴診断装置。磁気を脳にあててコンピュータで画像化する。CTではよくわからないような脳梗塞も、詳しくわかる。
MRA・・磁気共鳴血管造影法。MRIによって、 血管だけを鮮明な画像にする方法。

■ 急性期の治療
くも膜下出血
1.内科的治療・・・安静、血圧管理、止血薬の使用
2.外科治療・・・動脈瘤の治療
開頭クリッピング術・・頭蓋骨の一部を外し動脈瘤の根元に金属製のクリップをかける
血管内治療・・・脚の付け根の動脈から細い管(カテーテル)を入れて、目的の動脈瘤のそばまでいき、プラチナ製のコイルを動脈瘤に詰める

脳出血
1.内科的治療・・・降圧剤で血圧を下げる、抗浮腫薬の「グリセロール」で脳のむくみをとる
2.外科治療・・・血腫の除去
開頭血腫除去術・・頭蓋骨の一部を外し血腫を取り除く
CT定位的血腫吸引術・・CTで血腫の位置を確認し、頭蓋骨に開けた孔から吸引管を入れて血腫を吸い出す

脳梗塞
1.超急性期・・・血栓溶解療法〜tPA、ウロキナーゼ
2.超急性期以後・・・脳保護療法〜フリーラジカルという有害な活性酸素を抑える〜エダラボン
さらに抗血小板療法、抗凝固療法を行う

■ 慢性期の治療
 脳梗塞は抗血小板療法、抗凝固療法を行います。脳梗塞の再発予防の外科治療に頸動脈内膜剥離術、頸動脈ステント留置術があります。
 基礎疾患、生活習慣病を徹底管理することが必要です。
 リハビリテーションで機能回復を行います。家庭では、患者さんを受け入れる体制をとることが大切です。家の中でつまずいたりひっかかったりしないように、敷居の段差をなくしたり、廊下やお風呂場、お手洗いなどに手すりをつけるなど、安心して暮らせるための工夫を。また、なんでもやってあげるのではなく、今まで自分でやってきたことは自分でできるようになるよう、サポートすることが大切です。そのために、マヒなどがあっても使いやすい道具や食器を揃えるなどの工夫をしてあげましょう。


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