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内科33.パーキンソン病
 黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患です。4大症状として(1)安静時振戦、(2)無動・寡動、(3)筋強剛(筋固縮)、(4)姿勢反射障害を特徴とします。このほか(5)同時に二つの動作をする能力の低下、(6)自由にリズムを作る能力の低下を加えると、ほとんどの運動症状を説明することができます。近年では運動症状のみならず、精神症状も注目されています。また腸管におけるアウエルバッハ神経叢(Auerbach plexas)の変性も病初期から認められており、本疾患が全身性疾患であるとの認識をされるようになっています。
 ロンドンで開業していたお医者さん(James Parkinson)は、手がふるえて、身体が固くなり、次第に動けなくなる原因不明の病気を患った一群の患者さんがいることに気付き、これに非常に興味を持ちました。これらの患者さん6症例の、臨床的な特徴をまとめて、1817年に『振戦麻痺について(Essay on the Shaking Palsy)』という小冊子を出版、学会に論文として報告しました。この論文は学会には注目されず、歴史の中に埋もれてしまったのですが、世界的に著名なフランスの神経学者ジャン=マルタン=シャルコー先生が、数十年後にこの論文を発見し、その業績をたたえて「パーキンソン氏病」と名付けたため定着しました。

 有病率は本邦では人口10万人あたり100〜150人と推定されています。(欧米では150人〜200人とされる)わが国でも人口構成の高齢化に伴い有病率は増えています。発症年齢は50〜65歳に多いが、高齢になるほど発病率が増加します。40歳以下で発症するものは若年性パーキンソン病と呼ばれますが症状に差はありません。

 現段階では不明ですが、中脳黒質緻密質のドーパミン分泌細胞の変性・細胞減少により、これが軸索末端を投射する線条体(被殻と尾状核)においてドーパミン不足と相対的なアセチルコリンの増加がおこり、機能がアンバランスとなることが原因であると推定されています。神経細胞変性の機序としては、酸化的ストレス(特に黒質の鉄の役割とミトコンドリア呼吸酵素の異常)、環境毒(TIQ salsolinol,carboliniumなど)が注目されています。一部は家族性に発症します。
 病理では、肉眼的には黒質・青斑核の色素脱失がみられ、組織学的には、黒質や青斑、迷走神経背側核、視床下部、交感神経節などの神経細胞脱落が生じていて、典型的には残存神経細胞やその突起の一部にレビー小体(Lewy body)という特徴的な封入体が認められます。近年ではレビー小体は自律神経節など末梢レベルでも蓄積していることが明らかになってきました。レビー小体には、リン酸化α-シヌクレインの異常な蓄積が認められます。

■ 運動症状
 振戦、無動、固縮が特に3主徴といわれる。これに姿勢反射障害を加えた4症状が代表的な症状です。
 初発症状は振戦が最も多く、次に動作の拙劣さが続きます。同時に二つの動作をする能力は初期から低下します。お盆にのせたお茶をこぼさないよう気を配ると足の動きが鈍くなるし、クラッチを踏みながらギアを操作するマニュアル車の運転が難しくなります。中には痛みで発症する症例もあり、五十肩だと思って治療していたが良くならず、そのうち振戦が出現して診断がつくことも稀でありません。姿勢反射障害やすくみ足で発症することはまずありません。もしこれらの症状で発症したときには、パーキンソン病以外のパーキンソン症候群(注)を疑う必要があります。

 パーキンソン病は片側の上肢または下肢から発症し、病気の進行とともに症状は対側にも及びます。進行は緩徐です。振戦で発症すると進行は遅く、動作緩慢で発症すると速い傾向があります。症状が片側から対側に広がるのに通常1年から数年を要します。症状の左右差は進行してからも維持されることが多いです。

(1)安静時振戦(resting tremor)の特徴は頻度が4〜5 Hzの安静時振戦です。動作時には減少・消失するが、一定の姿勢を取りつづけると再び出現します。意識しないときに出現しやすいので、歩行時の手の振戦に注目すると観察されやすいです。指先のふるえは親指が他の指に対してリズミカルに動くのが特徴的であり、薬を包んだ紙を丸める動作に似ていることから(pill-rolling sign)とも呼ばれます。頭頸部に出現するときはうなずくように頸を縦に振る「ヨシヨシ型」になります。

(2)無動、寡動(akinesia, bradykinesia) 動作は全般的に遅く拙劣となるが、特に動作の開始が困難となり、椅子からの起立時やベッド上での体位変換時に目立ちます。瞬目(まばたき)が少なく大きく見開いた眼や表情に乏しい顔貌(仮面様顔貌)で、言葉は単調で低くなり(構音障害)、食事の咀嚼や飲み込みが遅く下手になり(咀嚼、嚥下障害)、字に力がなく小さく、書くにしたがって益々文字が小さくなり(小字症)なにげない自然な動作が減少します。歩行は前傾前屈姿勢で、前後にも横方向にも歩幅が狭く(小刻み歩行)なりますが、床に目印となる線などを引き、それを目標にして歩かせたり、障害物をまたがせたりすると、大またで歩くことが可能です。進行例では、歩行時に足が地面に張り付いて離れなくなる、いわゆる「すくみ足」が見られます。方向転換するときや狭い場所を通過するときに障害が目立ちます。

(3)筋強剛(固縮) (rigidity) は頸部や四肢の筋にみられます。他動的に関節を屈伸するときに連続的な抵抗を感じる鉛管様の筋強剛(lead-pipe rigidity)と、規則的な抵抗の変化を感じる歯車様の筋強剛(cogwheel rigidity)があります。上肢では歯車様、下肢や頸部では鉛管様になることが多いとされています。

(4)姿勢保持反射障害(postural instability) バランスを崩しそうになったときに倒れないようにするための反射が弱くなります。足がサッと出ないためバランスを崩して倒れることが多くなります。加速歩行も見られます。前方でも後方にでもちょっと押されただけで、踏みとどまることができずに、押された方向にとんとんと突進していきます(突進現象)。初期には見られないが、ある程度進行するとともに出現します。

(注)パーキンソン症候群とは、パーキンソン症状を呈するパーキンソン病以外の疾患の総称であって、(1)薬剤性パーキンソニズム、(2)脳血管性パーキンソニズム、(3)進行性核上性麻痺、(4)多系統萎縮症のパーキンソン型、(5)大脳皮質基底核変性症、(6)特発性正常圧水頭症などが含まれます。

■ 非運動症状
自律神経症状・・・便秘、垂涎などの消化器症状、起立性低血圧、発汗低下または発汗過多、あぶら顔、排尿障害、インポテンツなど
精神症状・・・億劫がり依頼心が強くなる、感情鈍麻 (apathy)、快感喪失 (anhedonia)、不安、うつ症状、精神症候(特に幻視)、認知障害、衝動制御障害(病的賭博、性欲亢進、強迫的買い物、強迫的過食、反復常同行動、薬剤の強迫的使用など)など

 確定診断は死後に病理学的になされる以外にないのですが、
1.上記の症状を呈する緩徐な進行性の疾患であること(他の神経変性疾患では病勢が亜急性に進むものもある)
2.CTやMRIの画像所見で特異的な異常が認められないこと(特徴的な所見を示す神経変性疾患や脳血管障害性パーキンソニズムを除外する)
3.L-ドーパ投与で症状が改善する
を満たせば臨床的にはパーキンソン病と診断できます。

 病期診断として、5段階の病期分類(Hoehn-Yahr分類)があります。
1度 一側性パーキンソニズム
2度 両側性パーキンソニズム
3度 軽度〜中等度のパーキンソニズム。姿勢反射障害あり。日常生活に介助不要
4度 高度障害を示すが、歩行は介助なしにどうにか可能
5度 介助なしにはベッド又は車椅子生活

 病勢の進行そのものを止める治療法は現在までのところ開発されていません。全ての治療は対症療法ですので、症状の程度によって適切な薬物療法や手術療法を選択します。

■ 薬物療法
 現在大きく分けて7グループの治療薬が使われます。それぞれには特徴があり、必要に応じて組み合わせて服薬します。
 2002年に日本神経学会から「パーキンソン病治療ガイドライン」が発表されました。既に6年経過しており最新とは言えませんが、これをもとに述べます。
 パーキンソン病治療ガイドラインの根底を流れる思想は次のとおりです。
(1)最も強力な抗パーキンソン病薬はL-dopaであるが、
(2)L-dopaの長期服薬により運動合併症が起こる。
(3)早期にはそれを回避する対策を、
(4)進行期にはそれを軽減する方法を講じよう。
その結果、以下の治療指針が示されています。

 パーキンソン病治療の基本薬はL-dopaとドパミンアゴニストです。
 早期にはどちらも有効ですが、L-dopaによる運動合併症が起こりやすい若年者は、ドパミンアゴニストで治療開始すべきです。  一方高齢者(一つの目安として70〜75歳以上)および認知症を合併している患者は、ドパミンアゴニストによって幻覚・妄想が誘発されやすく、運動合併症の発現は若年者ほど多くないのでL-dopaで治療開始して良い。
 現在わが国では6種類のドパミンアゴニストが使用可能であるが、それぞれ特徴があるので使い分けが必要です。ペルマックス・カバサールで心臓弁膜症や肺線維症が起きたとの報告があり、服薬するときは心エコー検査等で定期的に心臓の弁をチェックする必要があります。一方ビ・シフロールやレキップでは運転中に突然入眠して事故を起こす「突発的睡眠」が起こることがあるため、服薬中は運転しないよう警告が出されています。
 進行期で既にL-dopaによる運動合併症を認めるときは、ジスキネジアの有無によって対応が異なります。ジスキネジアが無ければMAO-B阻害薬を追加します。ジスキネジアのあるときはL-dopaの1回量を減らして、服薬回数を増やします。また、ジスキネジアに対しては塩酸アマンタジンが有効なことがあります。パーキンソン病治療ガイドラインの発表後、2007年に末梢性COMT阻害薬が発売されたため、現在では末梢性COMT阻害薬を使用するのが一般的です。ただし末梢性COMT阻害薬に反応しな症例もいるし、激しいジスキネジアを伴う症例では、末梢性COMT阻害薬を使用しても症状のコントロールが難しいことが多いです。このような場合は手術療法を検討します。
 精神症状、なかでも薬剤性の幻覚・妄想は大きな問題です。ドパミン系を刺激する治療そのものが、幻覚・妄想を誘発する可能性を持っています。幻覚・妄想の治療について、ガイドラインは「最後に加えた薬剤の中止」を勧めていますが、これで解決することは少ないです。基本は多剤併用を改め、処方を単純にすることです。精神症状を起こしやすい薬から順次中止します。抗コリン剤→アマンタジン→(ドロキシドパ)→MAO-B阻害薬→ドパミンアゴニスト→L-dopaの順に休薬します。それでも精神症状が残る場合には非定型抗精神病薬を用いるが、運動症状が悪化する可能性が高いので、パーキンソン病の専門医以外は手を出さない方がよいでしょう。

■ 手術療法
 手術は定位脳手術によって行われます。定位脳手術とは頭蓋骨に固定したフレームと、脳深部の目評点の位置関係を三次元化して、外から見ることのできない脳深部の目評点に正確に到達する技術です。頭蓋骨に開けた小さな穴から針を刺すだけなので、手術侵襲は非常に軽いといえます。目標となるのは(1)視床、(2)淡蒼球、(3)視床下核の3ヶ所で、(1)と(2)は熱を加えて特定部位を破壊する旧来の方法(凝固術)も深部電気刺激治療(DBS)も可能ですが、(3)はもっぱらDBSだけが行われます。DBSは脳深部に電極を留置し、前胸部に植え込んだ刺激装置で高頻度刺激する治療法です。高頻度刺激すると神経細胞は活動を休み、破壊したのと同様の効果が得られます。我が国では2000年4月から保険適応が認められました。DBSは脳を破壊しないので手術合併症が少ないかわり、異物が体内に残るため感染や断線の危険があります。また、術後にプログラミングあるいはチューニングと呼ばれる刺激条件の調整が必要です。
 手術治療は高度な設備と熟練を要するため限られた施設のみで実施されています。手術療法は薬物療法と比べてハイリスク・ハイリターンな治療法です。手術療法を選択するかどうかは、この治療法に習熟した専門医と相談すべきです。


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