38.熱中症
熱中症とは
熱中症とは、高温環境に長時間さらされることで体温調節機能が破綻し、さまざまな障害を引き起こす状態です。重症になると命に関わるため、早期の予防と対応がとても大切です。
熱中症の分類(日本救急医学会による)
熱中症は重症度に応じて3段階に分類されます。
軽症(I度)では、めまいや立ちくらみ、大量の汗、筋肉のけいれんが見られます。
中等症(II度)になると頭痛や吐き気、脱力感、判断力の低下が現れ、医療機関での治療が必要です。
重症(III度)では、意識障害やけいれん、40℃を超える高体温、肝腎機能障害や血液凝固異常などが生じ、入院・集中治療が必要となります。
主な原因
- 高温多湿の環境(真夏日、熱帯夜、梅雨明けなど)
- 長時間の屋外作業やスポーツ
- 高齢者や乳幼児など、体温調節機能が低下している人
- 水分や塩分の不足
予防法
- こまめに水分補給をする(塩分も同時に摂取するとよい)
- 涼しい服装を心がけ、帽子を着用する
- エアコンや扇風機を積極的に使う
- 炎天下での無理な運動や外出は控える
- 暑さを感じたら、早めに休憩や冷却を行う
- 高齢者には周囲の見守りも大切
応急処置
- まず涼しい場所に移動させる
- 衣服をゆるめて、首や脇、足の付け根などを冷やす
- 水分と電解質(経口補水液など)を補給する
- 意識がない、反応が鈍い場合はすぐに救急車を呼ぶ
高齢者に特に注意
高齢者はのどの渇きを感じにくく、脱水に気づきにくいため、注意が必要です。また、エアコンの使用を嫌がる傾向があったり、糖尿病や心不全、認知症などの持病によって症状が重くなることがあります。
水分補給と食塩の量
水1リットルあたりに0.1〜0.2%の食塩を加えるのが適切とされています。これは、食塩1〜2g(小さじ1/5〜1/3)に相当します。家庭で経口補水液を作る場合は、水1リットルに対して、食塩2g(小さじ1/3)と砂糖20〜40g(大さじ2〜4)を加えると良く、レモン果汁を少量加えると飲みやすくなります。
イオン濃度の目安(食塩2g/Lの場合)
食塩2gを水1リットルに溶かすと、ナトリウムイオン(Na+)と塩化物イオン(Cl-)はそれぞれ約0.0342 mol/L、すなわち34.2 mEq/Lになります。
スポーツドリンクのナトリウム量
アクエリアスには100mLあたり約45mgのナトリウムが含まれており、これは1リットルあたり約450mg、約19.6 mEq/Lに相当します。文献によっては、アクエリアスのナトリウム濃度を15 mEq/Lとするものもあり、実際の製品では15〜20 mEq/L程度と考えられます。
補足1 海水中の塩分濃度
海水1リットル中にはナトリウムが約10,500mg、塩化物が約19,000mg含まれており、ナトリウムは約456 mEq/L、塩化物は約535 mEq/Lになります。合わせて約991 mEq/Lに相当します。なお、海水の塩分濃度は約3.5%(35g/L)であり、そのほとんどがNa+とCl-によって構成されています。
ヒト血漿中のナトリウム濃度は135〜145 mEq/Lであるのに対し、海水はその3〜4倍の濃度となるため、直接飲むと逆に脱水を引き起こします。
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