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「機能性胃腸症(FD: Functional Dyspepsia)」は、内視鏡検査などで胃に潰瘍やがんなどが認められないのに、胃のもたれや痛みを感じる症状のことをいいます。こうした症状は、従来は「気のせい」「病気ではない」と言われたり、胃下垂、胃アトニー(アトニーとは筋肉の緊張が低下またはないことを意味し、胃無力症ともいわれます)、胃けいれんと呼ばれたり、神経性胃炎、慢性胃炎などと診断されてきました。しかし、胃の粘膜に何の異常もないのに、胃の粘膜に炎症があるという意味の「胃炎」を使うことは正確ではないということから、近年「機能性胃腸症」と呼ばれるようになってきました。積極的に治療の対象にして患者さんに安心感を与えようと付けられたのです。
胃のもたれは、食べすぎなどで、胃の中に長く食べ物がとどまることで起こりますが、食べる量を控えれば軽快します。また胃の痛みについても、潰瘍などの粘膜障害の場合は、その障害が治ると痛みもなくなります。機能性胃腸症は、そうした「食べすぎ」や「粘膜障害」ではなく、胃の運動機能に異常が起こることで、胃のもたれや痛みを感じてしまう病気なのです。
この疾患と混同されやすいのが、腹痛や下痢などが表れる「過敏性腸症候群」や、胃酸の逆流で食道がただれる「逆流性食道炎」です。これらを鑑別する必要があります。
消化器の専門機関を受診した患者さんのうち、約半数の患者さんがこの機能性胃腸症でだったという報告もあるほどで、もしかすると胃の病気の中で一番メジャーなものといえるかもしれません。30〜50歳代の女性に比較的多い病気です。
日本人の4人に1人が機能性胃腸症を経験したと見られますが、まだ保険適用される病名にはなっていません。そのため、日本消化器病学会は昨年春、この病気に「機能性ディスペプシア」という保険病名を認めるべきだとする答申を厚生労働省に提出しました。
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能性胃腸症の原因は、現在のところ明確になっていませんが、精神的ストレスや、過労などの身体的ストレスが原因といわれており、そうした緊張状態が胃のさまざまな機能に影響を与え、意のもたれや痛みを起こしているのではないか、と考えられています。
次のような症状を確認します。
胃の拡張機能・収縮機能が低下した状態
□ 以前よりも食欲が低下しています。
□ 少し食べると直ぐにお腹が一杯になります。
□ お腹が膨れた感じがします。
胃の知覚障害(知覚過敏)
□ 胃の不快感(むかむか・吐き気・嘔吐)があります。
□ 腹痛があります。
逆流性食道炎を否定
□ 胸焼け(食後の胸の痛み)は別にありません。
過敏性腸症候群を否定
□ トイレに行っても症状は変化しません。
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除外診断です。上記の問診以外に血液検査、胃カメラ、腹部超音波検査などを行います。
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家族関係や経済的な問題など、患者の悩みを聞くことで病状がかなり緩和されます。
また、病気について丁寧に説明すれば、納得して症状が治まる患者さんも多いです。
以下の治療を行います。
■ 食生活・日常生活の改善
規則正しい食生活を心がける
よく噛み、ゆっくり食べ、また食べ過ぎない
消化にいいものを選んで食べる
睡眠を十分にとり、ストレスをためないようにする
■ 薬物治療
消化管運動機能改善薬
低下したり、過剰になりすぎたりしている腸の運動機能を正常な状態に近づける作用を持ったくすりです。
胃酸分泌抑制薬
胃を刺激する胃酸の分泌を抑えるくすりです。
抗不安薬
軽い不安や緊張など、ストレスに有効なくすりです
漢方薬
炎症・腫瘍がない機能性胃腸症は、西洋医学が苦手とする病気です。漢方薬を試すのも一手かも。
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