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東洋医学02.気血精津液

 中医学は、臓腑の形態解剖学の面においては、いくぶん具体性を欠いています。これに対して、各臓腑の生理機能の理論面において独特な理論を展開しており、臨床面で有効に生かされています。その主要な内容の1つに、気血精津液があります。

 気・血・津液はともに人体の生命活動を維持するための重要な物質である。これらは水穀の精気から作られます。気・血・精・津液はそれぞれ別の物質ですが、この4者は互いに化生しあい、協調しあっています。これらは臓腑・経絡を機能させるための基礎物質であり、また一方臓腑・経絡の生理機能によって生産されるものでもあります。
 気・血・精・津液学説は、中医基礎理論の中でも重要な位置を占めます。


A.気

 中国古代哲学の根幹をなすものに「気の思想」があり、気は中医学においても重要な概念です。気については、古来からさまざまな解釈があり、これを一元的に定義することは難しいとされます。しかし現在、中医学でも気を物質としてとらえるのが趨勢となっています。この物質は、世界を構成するもっとも基本的な単位であり、宇宙に存在するすべての事物を創出する基礎的な要素とされます。
 人体もまた、天地の気を受けることによって生成されます。また人の生命活動においては、気という物質は重要な機能を担います。人体中の気は、その担う機能運行経路などによって以下のいくつかの種類に分類されます。

■ 気の種類とその生成過程

 人体における気は,分布部位の違いやその来源や機能の違いにより、元気・宗気・営気・衛気などの名称がつけられています。

[元気]
 元気は「原気」、「真気」ともいわれます。これは最も基本的で重要な気です。元気は主として先天の精が化生したものですが、出生後は水穀の精微によって継続的に滋養、補充されています。
 元気は三焦を通じて全身に分布しており、内は臓腑から外は腠理・肌肉・皮膚にいたるまで、いたるところに行きわたっています。人体の各臓腑・組織は元気の作用を受けて、各々独自に機能しています。この意味から、元気は生命活動の原動力であると考えられます。元気が充足すればするほど、臓腑・組織のはたらきは活発になり、身体の健康は保たれて、病を受けつけにくくなります。逆に先天の元気が不足していたり、慢性病によって身体を消耗すると、元気の作用は衰え、種々の疾病を生じる原因となります。

[宗気]
 宗気は、肺に吸入される清気と、脾胃の運化作用によって生成される水穀の気とが結合することによって生産されるもので、胸中に集められます。宗気には肺の呼吸作用と心血の運行を推動する機能があります。また、視る・聴く・言う・動くといった各種の身体機能とも関係があり、このため「宗気」を「動気」と呼ぶこともあります。宗気が不足すると、呼吸が浅く短くなり同時に声音も低く力感がなくなります。さらにひどくなると血脈の凝滞(流れが滞ること)や身体の動作に力が入らないといった症状が現れます。

[営気]
 営気は主に脾胃で作られる水穀の精微から化生したものであり、水穀の気の中でも比較的豊かな栄養分をもった物質です。営気は血脈中に分布しており、血液の一部分として循環することによって、全身に栄養を供給しています。営気と血は一緒に脈内を走行しており、密接な関係があることから、よく「営血」と呼ばれます。

[衛気]
 衛気は主に水穀の気から化生したものです。人体の陽気の1つであることから、「衛陽」ともいわれます。衛気には活動性が高く、動きが速いという性質があります。衛気は脈管に拘束されず、経脈外をめぐっており、外は皮膚・肌肉から内は胸腹部内の臓俯にいたるまで全身にくまなく分布しています。
 衛気には、肌表を保護して外邪の侵入に抵抗する、汗腺を開閉することにより体温調節をはかる、臓腑を温煦する、皮毛を潤沢にするなどの機能があります。

 このように気は人体のさまざまな部位に分布しています。その生成の由来を総括すると腎中の精気、水穀の気、および自然界から吸入する清気の3つにまとめることができます。  腎中の精気は、父母からさずかり腎中に蔵される先天の精気です。水穀の気は、脾胃で消化吸収される飲食物から得られる後天的な水穀の精気です。言葉の似ている清気は自然界に存在し、肺を経て体内に吸入されるものを指します。
 したがって気が体内で充分に生成されるか否かは、先天の精気の充足度、飲食物の栄養の多少、肺・脾・腎の三臓の機能が正常か否かにかかっているといえます。なかでも脾胃の受納と運化作用が最も重要です。

■ 気の作用 attention! ツボ

 気は人体に対してきわめて重要な作用をおよぼしており、さまざまな部位に分布しています。また気は、その種類によってそれぞれ独自のはたらきをもっていますが、それらの主な作用を概括すると、次の5つにまとめることができます。

[推動作用]
 人体の生長・発育、各臓腑・経絡の生理活動、血の循行、津液の輸布は、すべて気によって推動されています。気虚となり推動作用が減退すると、生長・発育の遅れ、臓腑・経脈の機能減退、血行の停滞、水液の停留などの病変が現れます。

[温煦作用]
 全身や各組織を温める作用です。人体が正常な体温を維持することができるのは、気の温煦作用の調節を受けているからです。気の温煦作用が減退すると、畏寒怯冷(異常なほど寒がる)・四肢の冷えなどが現れます。

[防御作用]
 気には肌表を保護し、外邪の侵入を防ぐ作用があります。また外邪がすでに人体に侵入してしまった場合、気はこの病邪と闘って外へ追い出し、健康を回復させるようにはたらきます。

[固摂作用]
 気の固摂作用とは体液が漏出するのを防ぐ作用で、血液が脈管の外に溢れないよう制御するはたらき、汗や尿の排出をコントロールするはたらき、あるいは精液を漏出させないようにするはたらき、などを指しています。

[気化作用]
 気化という言葉には2つの意味があります。1つは気・血・精・津液のあいだの化生を指します。例えば精は気に化し、気は血に化します。この作用を気化と呼んでいます。もう1つは、臓腑のもつある種の機能を指します。例えば膀胱のはたらきである排尿作用は「膀胱の気化」と呼ばれており、三焦のもつ水液代謝作用は「三焦の気化」と呼ばれています。尿・汗などの物質の産生と代謝に関与する作用です。

 以上、5つの作用はおのおの異なった性質をもちながら、互いに密接に関わりあい、相互に助けあって作用しています。

■ 気の運行

 人体の気は、高い活動性をもった精微な物質であり、絶えず動いて全身をめぐっています。その運動形式は気の種類によって異なります。気の運動の基本形式は「昇・降・出・入」の4種ですが、これは人体の生命活動をシンボリックに表現したものです。気の昇降出入の停止は、生命活動の停止を意味しています。
 『素問・六微旨大論』にあるように、「出入がなければ、人体の成長・発育・老衰もありえない。昇降がなければ、生成されたものを体に収蔵することができない」のです。
 昇・降・出・人という表現は、臓腑おのおのの機能、さらに臓腑間の協調関係を具体的に説明する言葉でもあります。例えば肺は呼吸を主っており、宣(宣散作用。全身に散布するはたらきをいう)と降(粛降作用。静かに降ろすはたらきをいう)の作用があり、吐故納新(古い気を吐き、新しい気を納める)を行っています。また臓腑問の関係としては、肺は呼気を主り、腎は納気を主っています。心火が下降するのに対し、腎水は昇り、脾気に昇の作用があるのに対し、胃気には降の作用があります。
 このように臓腑おのおのの機能が協調的に作用しあっていれば、すなわち臓腑の気の昇降出入が相対的にバランスよく行われていれば、正常な生理作用を維持することができます。
 ところが気の運行に滞りが生じたり、乱れて逆行したり、昇降出入がうまく行われなくなったりすると、五臓六腑や身体の上下・内外の協調関係と統一性に影響がおよんで種々の病変を引き起こします。例えば、肝気鬱結・肝気横逆・胃気上逆・脾気下陥・肺炎宣降・腎不納気・心腎不交などは、気機の失調によっておこる病証です。


B.血

 血は脈管中の赤い液体で、主として水穀の精微から化生されてできます。血脈には血液が外に漏れないようにするはたらきがあることから、「血府」とも呼ばれます。血は心が主り、肝に蔵され脾がこれを統摂することによって脈管中を循行しています。血は人体の各臓腑・組織・器官を濡養(栄養)しており、人体にとって不可欠な栄養物質です。

■ 血の生成

 血液は、中焦の脾胃により生成されます。飲食物(水穀)は胃に受納され、脾で吸収・運化されることによって水穀の精微に変化します。そのなかの精気と津液が脈管内にしみこみ、変化して赤色の血液になります。このほか、営気は津液と化し、心脈の中に注入して血に変化します。さらに精と血とのあいだには互いに転化しあう関係があり、精は血に変化します。このように血は水穀の精微・営気・精髄を基礎物質とし、これらから脾胃・肺・心(脈)・腎・肝などの臓器の機能により生成されています。

■ 血の作用

 血は全身を循行し、内は五臓六腑から、外は皮肉筋骨にいたるまで全身の組織・器官に栄養分を供給し、滋潤するようにはたらいています。この作用の人体におよばす影響は、眼の機能と四肢の運動能力に最も顕著にみることができます。血によって眼が滋養されれば物をよく見ることができ、足が滋養されれば正常に歩くことができ、掌が滋養されれば物をしっかりと握ることができ、指が滋養されれば、しっかりとつまむことができる、という具合です。
 また血の滋養を得ることで、筋骨は強くたくましくなリ、関節はスムーズに動きます。血が不足して充分に栄養が供給されなくなると、眼は乾いて動かしにくくなり、視力は減退し、さらに関節の動きが悪くなり、四肢のしびれ・皮膚の乾燥やかゆみなどの症状が現れます。
 また血は精神意識活動の基礎物質であることから、「神は気血の性となす」といわれています。気血が充足していれば、意識は明晰で、精神活動も充実していますが、不足すると精神・神志の病変が現れます。そのため心血虚や肝血虚になると、驚悸・失眠・多夢などの神志不安による症状が現れやすくなります。

■ 血の循行

 血は脈管の中を循行して全身を休みなく循環し、各臓腑・組織・器官の需要にこたえています。
 血液の循行は、内臓の共同作用によって正常に保たれています。「心は血脈を主る」といわれていますが、これは心気の推動作用が血液を循環させる原動力となっているためです。全身を循行している血脈は、すべて肺に集まり、肺気の作用を受けた後、また全身に散布されます。血液の循行は肺のほかに、脾気の統摂と、肝の蔵血作用および疏泄作用によっても調節されています。このように血液の運行は心・肺・肝・脾などの内臓の機能と関連して行われているため、その内のどれかの臓器に機能失調がおこると、血行に異常が生じやすくなります。例えば心気虚になると、血行の推動力低下の現れとして「心血瘀阻」が生じます。また脾気虚のために統血作用が弱まると、血便・崩漏・皮下出血などの症状が現れます。

C.精

■ 精の生成

 精はもともと両親の精が合体してできたもので、この精がなければ,人間として誕生することはできません。まず精が生じ,それによって身体が形成されるのです。この両親から受け継いだ精を特に「先天の精」といいます。精は腎に蔵されています。腎の一番重要な作用は精を蔵することです。しかしこれだけではすぐに無くなってしまいますから、飲食物から変化した後天の精の供給を受けます。

■ 精の作用

 腎に蔵されたを精を腎精といいますが、腎が蔵する腎精にも陰陽が存在します。陽の精(真陽・腎陽・命門の火)が陰の精(真陰・腎陰・腎水)を熱することで、腎精が働きを帯び、それを腎気といいます。腎気は命門から臍下にある丹田に送られ,そこから三焦を通って全身に運ばれていきます。腎気は原気とも呼ばれ,身体のありとあらゆる所に運ばれて、その発達と維持に関与しています。特に腎気が三焦を通じて五臓六腑に送られると、同じく三焦経由の津液と経脈経由の気血の供給を受けて、各々の臓腑は各々の精(陰陽あり)を造り、その精が各々の臓腑の気となります。ですから腎気が不足することはとりもなおさず五臓六腑全体の危機といえます。したがって精は人体を構成し生命活動を発展させ維持する上で不可欠の基本物質ということができます。
 また精は気の力で血液に転化し全身を巡ります。さらに腎精は腎気となるとともに、髄に変化して、髄の海である脳や髄の府である骨に蓄えられますから、腎は脳や骨と密接な関係があります。
 腎は青年期になると、天癸という物質を腎精から作り出し、この天癸によって男女ともに生殖能力が生じてきます。

D.津液

 津液とは体内における各種の正常な水液の総称であり、また唾液・涙・涕・汗・尿などもこれに含まれます。

■ 津液の生成・輸布および排泄

 津液は水穀の精微から化生したものの1つです。水穀は胃に入った後、脾によって消化吸収されて一部が津液となります。津液の輸布および排泄は、三焦を通路とし、脾の転輪作用、肺の宣散・粛降作用による通調水道(水道を通し、調節すること)、腎の気化作用などを通じて行われています。
 胃を経て、小腸から大腸に下る水液は、小腸と大腸で絶えず吸収され、脾・肺・三焦を経て皮毛にいたります。皮毛から排泄される水液が汗で、三焦の水道を通って膀胱に下輪した水液が腎と膀胱の気化作用を受け、外に排泄されると尿となります。以上のような関連する臓腑の作用を通じて、津液は体表では皮毛に達し、体内では臓腑に注ぎ、全身のあらゆる組織・器官を灌漑し、滋養しています。
 さらに肝の疏泄作用も、津液の輸布を助けています。また津液は血液の重要な組成部分です。したがって血の循行を推動している心もまた、同時に津液の輸布と密接な関係があります。
 以上から分かるように、津液の生成・輸布・排泄というー連の過程は、複雑であり、多くの臓腑の協同作用により行われています。なかでも特に重要なのは肺・牌・腎の3臓です。臓腑に病変が生じると、津液の生成・輸布・排泄が影響を受けます。また津液の生成が足りなかったり、喪失過多になると、傷津・脱液の病証が現れます。輸布が障害されて水液が停滞すると、痰飲や水腫が出現します。こうした津液の病変は、逆に多くの臓腑の機能に影響をおよぼします。

 例:水飲が心に影響すると、心悸がおこる
   水飲が肺に影響すると、喘咳がおこる
   津液が損傷して肺が乾燥すると、咳がおこる
   津液が損傷して胃が乾燥すると、口渇がおこる
   津液が損傷して腸が乾燥すると、便秘がおこる

■ 津液の作用

 津液には、滋潤・滋養作用があります。体表に散布された津液は、皮毛や肌膚を滋潤し、体内にある津液は臓腑を滋養しています。また孔竅に入る津液(涙・悌・唾液など)は眼・鼻・口などの孔竅を滋潤し、関節に入る津液は、関節の動きを滑らかにしています。さらに骨髄に入る津液は、骨髄と脳髄を滋潤しています。

■ 津液の分類

 津液をその性状によって区別すると、澄んでさらさらしたものを「津」といい、濁ってねっとりしているものを「液」といします。津は全身を循環し、各組織を滋潤します。また、体外には涙・唾・汗などとして現れます。
 液は骨節・筋膜・頭蓋腔のなかにあって、そこで関節の動きを滑らかにしたり、脳髄を滋養しています。
 ただ津と液は水穀から化生される点では共通しており、また生理・病理的には、この2つを明確に区別できないことも多いとされます。津が不足すると液もその影響で少なくなるし、液に問題があれば津にも波及します。したがって両者を合わせて、津液と総称しています。
 津液はまたその所在部位および臓給との関連性により、五液としてとらえられています。
attention! ツボ
五液
……の液
……の液
……の液
……の液
……の液

 この五液は、それぞれ対応する五臓で生成されると考えられています。
 涕は鼻孔を潤しています。鼻は肺の「竅」であることから、涕は肺の液とされています。肺熱・肺燥という病証では、涕が少なくなり、鼻が乾燥します。肺気不宣になると、鼻づまり・流涕が現れます。
 涙は目を流れます。目は肝の「竅」であることから、涙は肝の液とされています。涙の量が少なくて目が乾き動かしづらいという症状は、肝陰・肝血の不足によって生じます。また風にあたると涙が出る症状は、肝経の風火、あるいは肝腎両虚に生じます。
 汗は津液から化生したものです。津液は血液の重要な組成部分で、血は心が主っていることから、汗は心の液とされています。汗血同源ともいわれます。心陽虚になると多汗となり、心陰虚では盗汗が現れます。
 涎は口中に溢れでるが、口は脾の「竅」であることから、涎は脾の液とされている。脾胃の消化によって生成された津液がうまく上に運ばれないと、涎は減り、口が渇くようになります。また脾気虚になり統摂機能が弱まると、涎の量が増えることがあります。
 腎の経脈は、舌本を挾んだあと舌の下を通ることから、そこに分泌される唾は腎の液とされています。腎水が充実していれば口舌は潤って滑らかですが、腎陰が不足すると、口舌は乾燥しやすくなります。唾と誕は、両方とも唾液のことであり、口水と呼ばれることもあります。ただ涎はロ中に溢れ口角から流れ出ますが、唾は舌下に分泌し、口中から吐き出されるものを指すという点で、両者を区別しています。臨床においても、口角から涎が流れる症状は、脾の側から治療を行い、唾をよく吐くものには、腎を補益する方法をとります。
 五液と五臓の対応関係はおおむね以上のとおりですが、これは必ずしも絶対的なものではありません。たとえば汗は心と関係があるだけでなく、さらに肺・胃・腎などの臓とも関係しています。また涙は肝と関係があるだけでなく、心・肺とも関係があります。

E.気・血・津液の相互関係

 気・血・精・津液は、どれも水穀の精微からつくられ人体を構成すると同時にその生命活動を維持する基本物質ですが、同時に生理的には互いに依存し、制約し、相互扶助しあう関係にあります。したがって、病理的にも相互に影響をおよぼしやすいとされます。

■ 気と血の関係

 気と血が生成されるのに必要なものは、腎中の精気と水穀の精微である。これら人体の生命活動に欠くことのできない基本物質は、肺・脾・腎などのはたらきを通じて作られます。気と血の異なるところは、気には主として推動作用、温煦作用があり、血には主として栄養作用、滋潤作用があるといった機能面での相違です。こうした性質をまとめると、気は陽に属し、血は陰に属すと考えられます。両者の関係は次の5つにまとめることができます。

[1]気は血を生ずる
 血液の基礎となる物質は精で、精が血液に転化するための原動力は気です。気が盛んであると、血を化生する力は強まり、気が虚すと、血を化生する力は弱まります。そのために気虚が進行すると血虚を引き起こしやすく、息切れ・脱力感・面色不華(顔色が悪い)・頭昏(頭がふらふらする・めまい)・目花(目がくらむ)・心悸といった気血両虚による症状が現れてきます。  臨床Lこのような病証を治療するには、補血ばかりではなく、益気をも行ないます。これは「気は血を生ずる」という原則にもとづく方法です。

[2]気は血をめぐらせる
 血液の循行は、心気の推動作用・肺気の散布作用・肝気の疏泄作用に助けられています。そのため、「気めぐれば血めぐる」という表現にみられるように、気の循行と深い関係をもっています。病理的にも気の機能が失調して気虚あるいは気滞といった病理変化がおこると、しばしば血行不良となり、血瘀へと発展することがあります。
 そこで臨床上、血瘀を治療する場合には、治療方針として活血化瘀を主としますが、行気を加え、気の滞りの改善をはかることにより、良い効果をあげることができます。

[3]気は血を摂す
 血を摂すとは、気の作用により、血液が正常に脈管中を流れ、外に漏れることがない状態に保たれていることをいいます。
 気が虚してこの作用が減退すると、各種の出血症が出現しやすくなります。この病証を「気不摂血」といいます。その治療には益気をはかって、気の摂血機能を回復させます。これにより、止血の効果を得ることができます。

 以上 [1][2][3]にあげた気の血に対する3つの優位的作用(生血・行血・摂血の作用)力ヽら、「気は血の帥」といわれています。

[4]血は気の母
 気は血を運行させる動力であり、気が血中に存在しなければ、正常な血行を保てなくなります。しかし、逆に血は血中に存在する気に依存していると同時に、たえず水穀の精微を気に与えることで、気の機能を持続させてもいます。このことから「血は気の母」といわれます。気は血や津液と別れて存在することはできなません。大出血すると、気もこれにともなって喪失し、汗を大量にかくと気もかなり消耗します。

[5]気は陽に属し、血は陰に属す
 正常な生理状態下では、気血が調和し陰陽は相対的にバランスのとれた状態にあります。気血不和となり陰陽のバランスが崩れると疾病が生じます。そうした疾病に対しては、まず気血の関係を調整し、両者の協調関係を取り戻すことが図られます。これによって、多くの病気は治癒すると考えられています。

■ 気と津液の関係

 気と津液は、ともに水穀の精微からつくられ、全身を運行しているという共通点があります。性質や機能には違いがあり、気は陽に属し、津液は陰に属しています。両者の関係は、次の2つにまとめることができます。

[1]気能生津、気随液脱(気が盛んなれば津を生じ、気は液にしたがって脱す)
 津液は脾胃によって水穀から生成されます。したがって脾胃の気が盛んであれば津液の生産性は充足しますが、脾胃虚弱になると津液は不足することになります。また気には固摂作用があり、津液の排泄をコントロールするように働いています。気が虚して固摂作用が失調すると、多汗・漏汗・多尿・遺尿といった津液の流出現象が現れます。
 しかし一方で、気は津液に従属してもいます。津液を過度に損失すると、それに伴って必然的に気を損傷することになります。例えば不適切な発汗や一時に大量に発汗したときは、「気随液脱」といわれる気の損失状態が引き起こされます。大量の嘔吐や泄寫も、津液を損傷するだけでなく、気に波及して気を損傷します。

[2]気能化水、水停気阻(気は水を化し、水が停れば気も阻滞する)
 津液の生成・輸布・排泄は、気の昇降出入という運動にもとづいて行われており、肺・脾・腎・三焦・膀胱などの臓腑の気化作用と関係しています。すなわち気の気化作用、推動作用に依拠しています。
 病理的には、気の作用が低下すると、津液の輸布に影響をおよばします。例えば気化作用が失調すると水液の停留がおこり、これが痰飲となったり、水腫となったりします。水液の停留や、痰飲の生成は、逆に気機の流通を妨げる原因ともなります。これは「水停気阻」と呼ばれています。このように気化の失調と水液の停留とは、因果関係としてしばしば相互に影響しあっています。

■ 津液と血の関係

 津液も血も液体で、ともに栄養・滋潤が主な作用で、両者とも陰に属するとされています。生理的には、津液は血液の重要な一成分です。
 病理的にみると、繰り返し出血すると津液も損失し、「耗血傷津」という病証が現れます。また傷津脱液がひどい場合は血液に影響し、津枯血燥の状態が現れます。このことから、出血性の患者を治療するときに発汗剤を用いるのは不適当で、多汗で津液が不足している患者に潟血法を用いてはなりません。



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